G.R.A.C.Eとは?

By 2018-08-23 Blog No Comments

私のブログや講座の案内文によく登場する「G.R.A.C.E」について、今回ご紹介しようと思います。

G.R.A.C.Eとは、最新の脳科学や認知科学のエビデンスを盛り込みながら、慈しみの心(コンパッション)から生じるケアを実践するためのトレーニング・プログラムです。
アメリカの医療人類学者であり仏教の師でもあるジョアン・ハリファックスが中心となり作り上げたBeing With Dying(以下BWD:死に逝く人と共にあること)と呼ばれる、医療従事者の燃え尽きを防ぐトレーニング・プログラムが基になっています。このBWDは、ジョアン・ハリファックス老師がニューメキシコ州サンタフェに1990年に設立したウパーヤ禅センターで8日間の集中プログラムとして提供されているもので、仏教瞑想を中心に、ヨーガやカウンシルと呼ばれるグループワークを行いながら、医療に従事する自分自身の在り方や死生観について体感しながら理解を深めていくプログラムになっています。

G.R.A.C.Eとは、困難な状況で実践すべき5つの手順の頭文字から作られた言葉です。
G: Gathering attention 注意を集中させる「グラウンディング」
R: Recalling intention 動機と意図を思い起こす「理由」
A: Attunement to self / other 自己と他者の感覚・感情・思考に気づきを向ける「合わせる」
C: Consideration what will serve 何が役に立つかを熟慮する「考慮」
E: Engaging & Ending 関わり終わらせる。「縁(えん)」

注)「」内の日本語は、GRACEの語呂を日本語に合うように考えたもので、福井赤十字病院緩和ケア病棟スタッフに伝える際に使用した言葉です。ジョアン老師の許可を得ています。

詳しくは、以下の書籍、文献、サイトをご参照ください。
*ハリファックスJ. 井上ウィマラ(監訳)、中川吉晴、他(訳).死にゆく人と共にあること-マインドフルネスによる終末期ケア.春秋社 2015
*村川治彦.G.R.A.C.E-コンパッションに基づくケアのためのトレーニング 特集 マインドフルネスを医療現場に活かす実践を学ぶ Cancer Board Square vol.4 no1. 2018:70-75
*ウパーヤ禅センター
Being With Dying
G.R.A.C.E


Green Tara (Symbol of Compassion): drawing by Dolpo Tulku Rinpoche when he was 14 years old.
緑菩薩(慈しみの象徴):ジョアン老師とNomad Clinicなどで共に活動をされているドルポ・トゥルク・リンポチェが14歳の時に描かれたものです。この投稿についてお話したときに、皆さんにコンパッションの象徴としての緑菩薩として、ここでご紹介するために掲載してもの良いと言って下さいました。このご縁に感謝致します。