「平静さ」と「冷たさ」(GRACE勉強会での気づき)

By 2017-06-12 Blog No Comments

先週末のGRACE勉強会で、藤野さんがEmpathy(共感)とCompassion(慈しみ、思いやり)に関する実験についてお話してくださいました。

学生を対象として、とても大変な生活をしている学生の話を聞かせる実験をしたそうです。その時に、被験者の学生を3群に分けて、
①自分がその学生だったら、という態度で聞く。
②客観的に聞く。
③相手の立場に立って聞く。
という指示を出して、可哀想な身の上の学生の話を聞かせたそうです。
①はEmpathyを誘起し、Compassionは低い、という結果になりました。
②は共感も低く、慈しみも低いという結果でした。
③はCompassionを誘起し、Empathyは低い、という結果になりました。

そして、慈悲喜捨の瞑想がテーマの4コマ目の講義の時に、その4つの心の在り方と「似て非なるもの」があること、の説明がありました。
捨(平等心、平静さ)とは似て非なるものに、冷たさや無関心がある。
それを藤野さんが説明してくださった後だったと思います。
緩和ケア病棟看護師さんが、手を挙げました。

「自分が平静さではなく、冷たい態度になっているのではないかと心配になるときがあります。どうやって、自分の態度が『冷たさ』ではなく『平静さ』だと知ることが出来るのでしょうか?」

冷たさ、無関心は、自分がネガティブな感情や感覚に巻き込まれないための自己防衛反応として生じることがあると思います。ストレスがかかったときに、感覚を麻痺させて、それを感じないようにすることで身を守ろうとするように。
身体の感覚を感じられることが、自分の態度が「平静さ」に基づくものなのか「冷たさ」なのかを見分ける鍵になるのでは?と思います。

医療の現場では、客観的に状況を見ることが多くなされていると思います。
それは時に、冷徹な判断と行為に繋がる危険があるということに気づかされました。
血の通った医療を行うために大切なことは、Compassionが基盤として存在し、その上で、経験と知識を活かして相手に向き合うと言うことだと思います。
そのために
G:意識を集め「グラウンディング」し、
R:意図「理由」を思い起こし、
A:自分に波長を「合わせ」(体感覚を確認し、感情、思考に気づき)、他者に波長を「合わせる」(他者の立場から、その人の体感覚、感情、思考を感じる)。
C:経験と知識から、今何が優先的に必要かを「考慮」し、
E:関わり、なすべきことをやり遂げたら区切りをつける。「縁」

医療現場では、常に選択を迫られます。
一瞬のうちに判断しないといけない場合でも、GRACEを実践することによって、
平静さをもって、
慈しみの心から、
その時今自分がなすべきこと、限られた時間の中でベストを尽くすことが出来ると思います。
それによって、Eが可能になるのだと思います。後悔なく、気持ちに区切りをつけること。

福井赤十字病院緩和ケア病棟での看護師さんによるGRACE実践も1年が経とうとしています。
日勤業務開始前と終了時の1日2回を目指して、やってきて下さいました。
その中で、今回の勉強会を通して、今実践しているものの改善すべき点や、実践に対する認識を少し変えた方が良い部分も見えてきました。皆さんにお伝え仕切れていなかった部分も、私自身で理解出来ました。
改訂版を作って、2年目がスタートの7月を迎えたいと思います。

実り多いGRACE勉強会でした。
福井赤十字病院の看護職員の皆様、参加してくださった皆様、そして、藤野正寛さんに深く感謝致します。